魚の突き方
このページは魚突きを初めたばかりの初心者、もしくは自分のスキルにまだ自信が無く、周囲に魚突きを教えてくれる人のいない方達へのアドバイスを目的とし、「魚突きとは何か?」を説明するのでは無く、「どうすれば魚が突けるようになるか?」を考えていくコンテンツです。
@)潜水において、環境を問わず10m潜って30秒程度待てる。
A)突果において、地形を問わずコンスタントにイシダイやクロダイが獲れる。
上記のようなスキルを持つ人は、このページを読んでも得るものは無いでしょう。
また、具体的な潜水技術(フィンワーク、耳抜き、ジャックナイフ等)についてはここでは触れません。これについては他� �スキンダイビングorフリーダイビングのサイト等を参考にして頂き、魚突きと同様、実践の中で技術を磨いていってください。
さて、ここでは魚突きに必要と思われる要素を、大きくいくつかの項目に分けてみました。いろいろと偉そうな事を書いてはいますが、私自身、魚突き歴はまだ5年少々の若輩者です。ですが、たかが5年程度の経験だからこそ、熟練者からすれば一見当たり前に思われがちな事や、初心者の知りたい事、悩んでいる事に気付くことができ、またそれらを伝えることができるのではないかと思います。熟練者にとっては当たり前過ぎることであり、また記載されている文面の中には反対意見もあるかもしれませんが、このサイトを訪れる初心者の方を始め、魚との駆け引きに行き詰まっている方� �対し、"何かのきっかけになれば"という思いで、私のこれまでの経験と考えを活字にしてみました。「魚突きとはこうである!」と述べているのではありませんし、ただ好き勝手に自分なりの見解・思想を述べているだけですので、もちろん各項目において"これが全て"という分けではありません。あくまでこれらは頭の片隅に参考程度に留め、現場での実践にて役立て頂ければ幸いです。(2008年9月現在)
また、以下の全ての項目においては、
・手銛を用いた素潜りの漁(フィン、マスク、シュノーケル、ウェットスーツを着用)
・地磯や砂浜からのエントリー
・大漁を目的とするのでは無く、自分の目標となる魚を獲ることを目的とする
こういった� ��タンスで魚突きをする方達を対象にさせていただきます。
※海での魚突き、素潜りを行う際には十分に注意して下さい。このページに書いてある全ての事項に対し、何らかの事故・損害が生じたとしても、当サイト・管理人は一切の責任を負いません。全てはご自分の判断、自己責任の下でお願い致します。
Physical ‐体力‐
〜まずは水深10mで勝負出来る身体を〜
@) 筋力
潜るために必要な筋力は、泳げば自然と身に付いていきます。魚を突く上ではヤスを握る前腕部の筋力(握力)はもちろんですが、反発力の強いフィンを履く場合は足首への負担もかなりかかってくるため、足首周りの強化や大腿部周囲、脹脛の筋力も付けておいたほうが良いでしょう。…とは言え、魚突きは状況によっては海の中で大きなウネリに逆ったり、魚の力を抑え込んだりするわけですので、"ここの筋肉を!"というよりは、トータル的な筋力が欲しいですね。ポイントによっては重い荷物を背負って山道を歩いたり、場合によっては大きな魚を腰に下げたまま崖を登ることだってありますから…。
A) 肺
□ 息止め
目的とする深度にもよりますが、ある程度の息止めが出来なければ、魚との満足な駆け引きはできません。例えば陸上(静止時)で1分間息を止めることが出来たとしても、酸素を多く消費する潜行時の全水中滞在時間はおそらく30秒も持たないでしょう。水面から目的深度までの往復時間を考えると、その時間では10m潜って海底にタッチして浮上するのが限界だと思われます。10m潜れば大抵の魚には出会うことが出来るため、あえてここでは10mを基準に話をさせていただきますが、そこ(10mライン)で1分近く魚との駆け引きをするためには、陸上での息止め時間は少なくとも2分30秒は欲しいですね。(※ただし、これはあくまで目安です。フィンワークの技術、フィンの推進力、耳抜きの抜� ��加減、精神状態等で、大きく左右されます。)⇔長時間の息止めが可能であれば、未熟な潜水技術を補うことが出来ます!
息止め時間を少しでも長くしたければ、とにかく何度も息止めを繰り返して訓練するのみです。これに関しては体格や肺の健康状態により、個人に多少の差は出るかもしれませんが、健常な人であれば普通に訓練すれば誰でも3分は止められるようになるはずです。日常生活の中や、仕事の合間など、少し暇をみつけては息を止めてみましょう。始めは1分程度しか息止めが出来なくても、「あと10秒…、あと5秒…」と地道に頑張っていけば、少しずつでも必ず息止め時間は長くなります。自分で目標とインターバルを設定して、ストップウォッチを片手に繰り返し練習すると良いでしょう。重� �なのは、たとえ練習する回数が少なくてもこれを毎日繰り返すこと。訓練したことのない人が息止めを開始してすぐに息苦しさを感じるのは「身体よりも、脳が息を止めるという行為に慣れていないから」です。陸上の訓練(静止時)においては少しくらい無理をしたって大丈夫。実際に体内の酸素濃度を測定しながら息止めをしてみれば解ることですが、脳が感じているほど身体は酸素を必要とはしていません。ただし、水中での無理は禁物です。
ヨガ等を取り入れている人もおられるようですが、僕自身は趣味の範囲の魚突きにおいて、そこまでの必要性を感じた事はありません。とにかく、「息を止めるという行為に、脳を慣らせる」ことが必要です。息止めの際には頭の中で静かなBGMでも流して気を紛らわせば、長 く止められることができるはずです。
□ 肺活量・持久力
息止めの長さではなく、ここでは持久力。そして全体的なスタミナについて。
1日に3本、4本とハードな素潜りをしたり、1本勝負でも休憩を取らずに3〜4時間と長時間潜ったりすれば、体力的な疲労に加えて肺機能も低下し、息止めの時間が極端に短くなります。息が止められなければ満足に魚突きは出来ませんので、潜行意欲も薄らいでいくでしょう。与えられた時間の全てを魚突きに費やし、持てる技術を全て出し切るためにも、基礎体力は必要不可欠です。
最後の最後にチャンスを引き寄せる事が出来るか?
最後の最後で回ってきたチャンスをモノにできるか?
海から上がれば全てが終わりです。陸に魚は居ません。集中力を切らさない 、最後まで諦めないメンタル面(根性)も持久力に大きく左右されます。
※日頃の持久力トレーニングも必要ですが、突行においては休憩時の適度(適切)な栄養補給と水分補給も心掛けてください。
B)三半規管
少しくらいの波で酔い、フラフラになってしまっては魚突きになりません。三半規管も鍛える事ができると聞き、少しでも悪海況に強くなろうと勤務中に回転式の椅子に座ってグルグルと馬鹿みたいに回っていた頃もあったのですが、毎回の訓練後には当たり前のように目が回って気分が悪くなってしまい、とても効率の良いトレーニングだとは思えませんでした。
薬局などで市販されている酔い止め薬を服用すればある程度までの悪い海況は克服できますが、酔い止め薬の中には副作用として眠気を誘発するものもあるため、服� ��に関しては注意を払う必要があります。もし服用された場合は、帰りの運転など十分に気を付けて下さい。
Mental ‐精神‐
〜海の中では常に冷静な判断を〜
@) 克服 恐怖心
まずは潜水の面から。慣れない海域、サメなどの危険生物の存在、船の航路付近での突行、漁師との間合い…。いろいろと精神面を揺るがす要素はありますが、誰でも初めのうちに気になるのは単純に"深度が増す事による恐怖"でしょう。薄暗い海の中を下へ下へと潜って行き、未知なる水深・水圧を経験(体感)した時、「えらい深さまで来てしまった!」「無事に海面まで帰れるのか?」と不安になるはずです。そうして精神面が不安定になると、絶対に満足な息止め時間は得られず、すぐに海面を目指したくなるでしょう。精神状態の安定と、息止め時間の延長には極めて深い相関関係があります。
息止めの項でも述べましたように、魚突きを始めたばかりの初心者がまず目指 して欲しい深度は10m。この二桁の大台を克服できるかどうかは、魚突きをする上ではかなり大きいと思います。(10m潜れる技術・基礎体力があれば、その延長で15m、20mと絶対に潜れるようになる。)もちろん誰しもいきなりの到達は難しいと思われますので、まずは海底が見渡せる範囲での潜行から始めていき、目標深度より浅い水深において出来るだけ長い滞在時間をキープするようにしましょう。その水深で10秒待つことができれば、単純にあと+1mは潜れるはずです。7〜8m潜って海底の岩に掴まり、周りの景色をゆっくりと見渡せる余裕が出来れば、10mはすぐそこです。そして一度その目標とする水深を克服すると、肺もその水深による水圧に慣れ、次回以降の潜行はストレスも軽減され、非常に楽に� ��じることができるはずです。
体調の悪い時などは絶対に無理をせず、焦らず少しずつ深度を深くしていきましょう。天気が良く透明度の高い日、海況の穏やかな日などは精神的にも潜りやすいはずです。
※水深に対する恐怖の話をしましたが、素潜りにおいて、ある程度の恐怖心は常に持ち合わせてなければなりません。魚突きは自然を相手にする趣味です。海では何が起こるか解りません。長時間の潜行、潜行深度の記録更新等については、無謀なチャレンジだけは絶対にしないようにして下さい。小さな慢心が、そのまま大きな事故へと直結します。
A)焦り
どんなことが起こっても海中でパニックにならないようにしましょう。常に想定外のことが起こら� �いように、安全面には十分に気を配ってください。サメや船・ボートのスクリュー、速い海流も危険ですが、何より現場では自分を見失う事が一番危険です。
魚との遭遇時も同じです。大物や憧れの魚と思わぬタイミングで鉢合わせた時、「ハッ!」としたり、テンパって直ぐに身構えたりするだけで魚は逃げて行きます。いつどんな事が起こっても良い様に、常に先の事態を予測し、冷静さを心掛けましょう。
B)慣れ・苦手意識
憧れの魚、目標とする魚、長年掛かっても獲れなかった魚、ほとんど遭遇すらできなかった魚が、たった一回の捕獲をきっかけに、その後は不思議とコンスタントに獲れるようになったりすることがあります。何度遭遇しても獲れないという「失� �」も、それを延々と繰り返していれば知らず知らずのうちに自分の糧になっているはずです。失敗は何度繰り返しても良いと思います。焦る必要はありません。苦手な魚に対しても、マイナスイメージを持つことなく、余裕を持ってミスしましょう。そして、失敗した後には必ず「何故獲れなかったのか?」を考えましょう。
炭水化物が増減するとき何が起こるか?
※20cmのイシダイと25cmのイシダイの捕獲難易度は変わりません。25cmと30cmの個体を比べても変わりません。同じく、30cmのイシダイが獲れた人は35cmのイシダイも簡単に獲れるでしょう。35cmのイシダイを獲れる人は40cmのイシダイも獲れて当然です。
しかし、20cmのイシダイを獲った人が、いきなり次に40cmのイシダイを獲れるか?と言われれば、答えは???ですよね。もちろん答えはやってみなければ解りません。なかなか言葉では伝え難いですが、技術的な事を除けば、ここで必要なのは慣れです。
誰でも20cmのイシダイを獲るのに、そ んなに苦労はしないと思います。要はそこからの積み重ねが大事なんです。結果を焦らず、少しずつステップアップしましょう。いつの間にか慣れてきます。苦手だった魚、憧れだった魚が、いつしか獲れて当然のような感覚に陥る事もあるでしょう。ちなみに私の初イシダイは16cmでした。黄色い体色がやっと白くなったような個体でした。魚突きを初めて2年間で合計30匹捕獲しましたが、そのうち40cmを超す個体はわずかに2匹(最大42cm)。最初はそんなものです。いきなり大物を狙うというのは無理があります。
W)謙遜し過ぎない
「運が良かった」「たまたま魚が通り掛かったから」「まぐれで獲れた」
これらは非常に良く耳にする言葉ですが、それは運でも偶然でも� �グレでもありません。言うなればそれこそが、魚突き。それらを全て合わせて、それがその人の魚突きなんです。魚の挙動、行動パターンの全てを読み切ることなど不可能です。それを、自分のスキルと経験、勘(狩猟的本能)で補いながら、目の前の魚を捕獲するのが、魚突き。自分の(思う)実力以上の魚が獲れたとしても、それはあなたの実力で獲った以外の何ものでもありません。目の前の突果に対して自信を持つことは、次回以降の同魚種・同サイズの魚との駆け引きにおいて、時間的なゆとりと精神的な落着きを齎してくれるでしょう。自分がどれだけスキルアップしてるか?なんて、なかなか気付けるものではありません。謙遜し過ぎず、自分に自信を持つことも大切です。
X)目標
自分の中で目標を持ち、それに向かって自分を磨くことも大事です。目標があれば、それに向かう気持ち(向上心)を高いレベルで維持することができます。突行毎の目標、年間の目標、魚突き人生の目標…。何か一つは心に秘めておきたいですよね。
ただし、あまり目先の目標や突果ばかりに固執してしまうと、魚突き本来の楽しさを忘れてしまいます。向上心を持ち続けることがスキルを上げていく最低条件ですが、それは「魚突き=楽しい」という基礎の上での話です。同レベルのスキルを持つ友達にライバル意識を持ち、切磋琢磨していくことは素晴らしい事だと思いますが、勝負に拘り過ぎては気疲れしてしまいます。
Point ‐ポイント開拓・保護‐
〜自分の足で探し、自分の目で見極める〜
どれだけ卓越したスキルを持っていても、魚の居ないポイントでは魚は突けません。その反面、潜行技術や経験が少しくらい未熟でも、地形や潮流等に恵まれた好条件のポイントに出合うことができれば、自分の実力以上の突果が得られるはずです。
当たり前の話ですが、少しでも深く潜る事が出来れば、それだけ捜索範囲は広くなります。一般的にはボトムが5mの沈み根と15mの沈み根では、大物との遭遇率は比較にならないほどかけ離れています。とはいえ、「自分は深く潜れないから、長く水中に居れないから」といって大物との遭遇を諦め、魚突きの可能性を自ら狭めるのは考えものです。
… 僕が水深5m以浅で見た(獲った)ことのある魚 …
・ イシダイ 55〜60cm級
・ マダイ 50cm級
・ キジハタ 50cm級
・ 回遊魚 60〜70cm級
・ スズキ 85cm級
・ クロダイ 50cm級
・ マゴチ、ヒラメ、etc...。
地形や潮流、そして時間的なタイミングが上手く噛み合えば、最大深度の浅いポイントにも大物は現れます。
@)ポイント開拓
鍛えることの出来るスキルとは直接結び付きませんが、ポイント開拓における眼力、嗅覚を養うことも重要な要素です。
人から教われば苦労せずして実績のある好ポイントを手に入れることが出来ますが、やはりそれでは魚突きの醍醐味が欠けてしまいますよね。自分で足を運び、陸から海の中を想像し、何度か失敗を繰り返しながらやがて一級ポイントに出合う…。そこで満足な突果が得られて初めて、本当の意味で充実感が得られるのではないでしょうか?
まずはターゲット(対象魚)に応じ たポイントを求めます。その魚が泳いでいそうな光景が、そこ(海中)に広がっているのかどうかをイメージし、考えましょう。
… 魚が好む環境とは …
・ 海底環境、地形が起伏に富んでいる。(大きな沈み根、岩場等)⇒魚の隠れるスペース
・ 海底がフラットでも、藻場や捨石・テトラ等があれば良い。⇒小魚の隠れるスペース
・ 潮通しが良い。(岬の先端、沖磯周囲)⇒小魚が多い
・ 餌となる物(プランクトン・小魚・貝類)が多い。⇒食物連鎖
・ 適度な水深 ⇒魚によってはある程度の水深を必要とする。
当たり前の話ですが、サザエやウニ、フジツボなどを食べるイシダイが、殺伐とした砂地に群れているはずは無く、潮通しの悪い浅場にクエが泳いでいるはずもありません。必要な条件を満たした所に魚は棲んでいます。魚が居ることに理由があるように、魚が居ない事にも理由があります。開拓で初めて訪れたポイントで、たとえその時に魚影が薄くても、上記のような環境が整っていれば日を改めてリトライする価値は十分あるでしょう。一度顔を出す程度では、なかなかそのポイントの持つポテンシャルを見極めることは難しいと思われます。
ポイント開拓において意外と参考になるのは、開拓とするエリアの地図や、現地の釣り雑誌から の情報です。GoogleやYahoo等、最近のweb上の地図は非常に精度が高く、海岸の環境、岬の位置、沖磯、漁港との位置関係など多くの情報を入手する事が出来ます。それに釣り雑誌から得られる釣果を加える事で、大まかな検討をつけることが出来るはずです。
A)ポイント保護
上述の続きになりますが、釣り雑誌に載ってあるポイントにいきなりズカズカと踏み込んでいくのはモラルに欠ける行為ですよね。あくまでそれらは参考程度に留め、釣り人が居ないポイントや、釣り人が足を運べそうに無いポイントで潜るのが賢明でしょう。釣り師や漁師にとって我々スピアマンは決して歓迎される存在ではありません。たとえ合法的な地域での趣味だとしても、クレームに対して対等に出るのではなく、「トラブルを未然に防ぐ、無用なトラブルを回避する」こともポイント保全という意味では非常に重要です。せっかく苦労して自分で探した好ポイントも、釣り師や漁師とのトラブル、または海保や警察からの圧力などで失ってしまっては、全てが台無しですよね。私達が漁師や海上保安庁と言� ��争い、その結果、私達にとって有利に事が運ぶわけはありません。現場で対立してしまった場合は、今目の前にある自分の欲求よりも、ずっと先のことを考えた行動をとるべきです。
※魚影の濃いポイントを見つけた場合は、その地形・環境・海藻の生え具合や、潮の当たり方等を覚えておき、次回以降の開拓の参考にしましょう。
※初めてのポイントへ足を踏み入れる際は、予め突行後のEXITが容易な場所かどうかも確認しておいて下さい。
※もちろん、自分で見付けたお気に入りのポイントを、他人に口外しないこともポイント保護の一つです。
Technique ‐駆け引き‐
〜魚の気分になって考えてみる〜
魚突きとは非常に面白いもので、対象魚に合わせて竿、仕掛け、餌と使い分けなければならない魚釣りと違い、1本の銛と自分の技量だけで、色々な魚と対等に駆け引きする事が出来ます。
またこれは何に対してもそうなのですが、どんな熟練者でも目の前に来た標的を100%の確立で捕獲する事は不可能です。99%はあっても、100%という数字はあり得ません。たとえそれがどれだけ難易度の低い魚でも、獲れるかもしれないし、獲れないかもしれない。そしてその結果を左右するのはスキルかもしれませんし、魚の個体差(警戒心に大きなバラツキがあるため)によるものかもしれません。雑にアプローチして獲れる場合もあれば、どれだけ慎重に近寄っても逃げられる場合もあります。要� ��るに、答えは全て結果論なんです。魚との駆け引きにおいて、何が正しいという明確な答えはありません。出来ることは、捕獲率が少しでも高くなるような攻め方をするしかないのです。(でも言葉の裏を返せば「こうすれば確実に獲れる!」なんてゲームがあったら、面白くないですよね?)スキルの高いスピアマンほど、魚との駆け引きにおいて多くのパターンを持ち合わせており、様々なシチュエーションに応じて、瞬時に最善の策が取れるようになっています。
というわけで、ここでは魚との駆け引きについて私なりの考えを述べてみます。この項と、現場での自分の経験、そして失敗を糧に、スキルアップへの糸口を見付けて下さい。
@)魚の動き
まずは、魚の挙動を考えて みます。中層を泳いでいる魚にしても、岩陰でホバリングしている魚にしても、
・ 興味を持てば好奇心で魚は寄ってくる。
・ 無駄に動けば警戒して魚は逃げていく。
これが全てです。実にシンプルですよね。もっと言えば、
・ 好奇心>警戒心 …の時は魚が寄ってくる(または逃げない)。
・ 好奇心<警戒心 …の時は魚が逃げて行く(または寄り付かない)。
魚を寄せるにしても、魚に寄るにしても、いかに魚の警戒心を抑えるかがポイントです。どんな魚にも警戒心と好奇心があります。また、どんな好奇心の強い魚にも少なからず警戒心は存在します。また、それらには魚のサイズや活性等により個体差もあります。
とりあえずは簡単な魚、カワハギで例えてみます。
カワハギはほとんど警戒心がありませんので、遭遇直後に逃げられる事はありません。しかし、音を立てながら距離を詰めたり、ヤスを不用意に近付けたり、長時間に渉りプレッシャーを与えたり、またはミスショットをすれば次第に警戒心は上がって行き、それが一定のライン(好奇心<警戒心)を超えた時に初めてカワハ ギはその場を離れようとします。
警戒心と好奇心が同じくらいのイシダイならばこんな感じです。
適切な寄せ方で好奇心を徐々に上げていけば、警戒心を好奇心が上回り、魚は必ず寄って来ます。ですが、寄せ方が悪かったりすると、いつまで経っても射程エリアギリギリのところをフラフラしているだけで、寄って来ません。また不用意な動き一つで警戒心が一気に上がり(好奇心を勝り)、一目散に逃げられるというパターンもあります。
破損したsciactic神経は何のようになりません
要するに、魚との駆け引きにおいては、全てが「警戒心と好奇心」のバランスなんです。たとえ同一魚種であっても、岩下に隠れている魚は警戒心が薄らいでいるし、マズメ時などで食い気の立っている(活性の高い)魚は好奇心が上がっています。また、一般的にサイズが大きくなればなるほど、警戒心は増していくと言われていますが、(僕の考えでは)生物である以上好奇心自体はそれほど変わらないと思うので、寄せ方や寄り方に十分な注意を払えば、サイズによって捕獲難易度がそれほど極端に変わることも無いはずです(幼魚≠成魚)。
また、どんな魚種においても各々好奇心に大きな差は無いと思いますが、警戒心� ��ついてはかなり個体差があるようです。初めにも書きましたように、その個体差はスキルでカバーしきれるものもあれば、高い技術を持ってしてもまったく太刀打ちの出来ないものもあります。
魚に出会った直後に「この個体、やたらと警戒心が高いな…」と感じることが出来たなら、普段とは違う攻め方、思い切ったアプローチを仕掛けてみるべきです。
□ 殺気って…?
「殺気を消して近付くと警戒され難い、殺気を消して魚が寄るのを待つ」などと聞く事がありますが、殺気というのは非科学的で物証できない言葉であり、それを「魚が感じる事が出来るのか?」ましてはそれを「人間が意図的に押さえる事が出来るのか?」は解りません。というか、僕はそれの存在自体を信じていません。「殺気って何なんですか?」という質問を何度か受けたことがありますが、僕はその度に「殺気?あるんですかね?考えた事無いですよ。」と答えています。
…と、全面否定しておきながら、僕は自身の突行レポート中に「殺気を消して近寄って〜」等と書いてあると思います(書いてないかもしれませんが…)。ここで僕の言う殺気とは、本当に殺意を消そうとして� �る訳ではなく、ただ"無心"で近寄っているだけです。邪念や雑念を捨てて…とでも言いましょうか。魚との駆け引きの際に、変に力が入っていないんです。スーッと潜ってスーッと近寄って、サクッと捕獲。なかなか伝わり難いと思いますが、こんな感じです。捕獲成功後にふと振り返った時、「あれ?オレ、今何も考えてなかったな〜」的な感覚ですね。「うぉ〜!獲りてぇ〜、獲りてぇ〜、獲りてぇぇ…」くらいの気持ちで近寄ったりすると、無駄な力みが出てそれが魚に伝わってしまうのでしょうね。ヤスを構える際のモーションや、撃つ瞬間の手のブレ、フィンワーク等…。もしかしたら、魚にはそういう微妙な動揺を察知できる何かがあるのかもしれません。
【補足】数年前の月刊釣り情報(中国地方� �釣り雑誌)には、「魚が水の変化から危険を察知(感知)できる範囲は、その魚の側線の長さの2倍まで。」と書かれていました。しかし、魚の見える範囲はもっと広く、音は水中で非常に良く伝わるため、魚が僕達の何に一番警戒するのかは…正直解らないですね。少なくとも僕達の放つ『気』ではないような気はするので、これについてはあまり深く考えなくても良さそうです。最後まで力まず、自然体を心がけましょう。
□ 天候と海況などが与える影響
… 天気 …
雨が続けば海面に薄っすらと雨水の層ができ、海水との温度差(?)によりその境界にモヤモヤ状の層が発生するため、極端に透明度が悪くなります。潜ってその境界層を抜けてしまえば一気に視界は開けますが、かなりストレスが溜まる突行になるでしょう。また、河口域で潜る場合、雨の後は泥水が多量に流れ込むため、透明度の低下に繋がります。一級河川など大きな河川の場合は、かなり広範囲かつ長期間にわたって濁りが蔓延するため、注意が必要です。
悪天気の場合、海水の濁り具合によっては太陽が出ている時よりも透明度が高く見える場合や、全体的に釣り人が少なくなるという利点もあります。
… 潮 …
大潮、小潮、いろいろとありますが、釣りほど神経質にならなくても良いでしょう。潮が大きく動いている時は活性も高く、普段は岩陰等に隠れて見つけ難い魚も、外に出て来て泳いでいるかもしれません。ですが、「今日は潮が良いから突行する」「潮が悪いから突行は中止」と潮で突行の可否までを判断するほどでは無いと思います。どんな潮であれ魚は海にいるわけですし、食い付かなければ釣れない魚釣りとは違い、魚の寄りが悪ければこちらが寄れば良い、魚が何を思っていようと構わず突けば良いのが魚突きですから…ね。
潮の干満に対しても同じです。場所によっては魚影の濃さに若干違いが出てくるかもしれませんが、それほど大きな有意差は無いはずです。あまり気にせず思いのまま� �突行しましょう。
… 波、ウネリ …
波が高い場合は危険ですので、海に入るべきではありません。そんな時に無理して海に入ってもまともな魚突きは出来ませんし、海が大きくウネっている時には、普段より魚影が格段に薄かったりします。
前日の天気予報より、波の高さ・方向、風の強さ・方向などの情報を入手し、海岸の地形を考えて突行の可否を予測することも大切です。また、地域によっては現地近くの岬などに海岸線を実況で中継しているライブカメラがありますので、インターネットで調べてみるのも良いでしょう。
どんなポイントに入る時でも、まずはエントリーとエキジットの安全が確立されているかを確認して下さい。
… 時間帯 …
朝マヅメ、夕マヅメの言葉があるように、日の出直後と日没直前は魚にとって食事時です。活性(好奇心)が上り、魚が泳ぎ回る時間帯ではありますが、これも潮と同じですね。僕の経験上では日中との有意差はほとんどありません。
※夜間の突行は僕自身経験がありませんので、ここでは触れません。
A)魚を探す
ポイント開拓の項とは違い、ここではそのエリア内での魚の探し方を考えます。
□ 海面を泳ぎながら探す場合(浅いポイント)
初心者にありがちなのが、常に真下ばかりを気にして海面を移動してしまうことです。それでは進行方向の前方に居る魚に対し、自分より先に魚に人間の存在を気付かせてしまい、せっかく見付けても「視界に入ると同時に即逃亡された!」なんてことになってしまいます。さらには自分の視界に入る前に、既に逃げられていることも多々あるでしょう。海面から魚を探す時に心掛けるのは、真下よりも進行方向斜め前方、左右を気にして探すこと。生い茂った海藻の中で魚を探す時も、海藻の陰から出来るだけ先の状況を見ながら探すと良いです。自分が先に魚に気付くか、魚が先にこちらに気付くかで、その後の結果は大きく左右されます。
□ 潜って魚を探す場合(深いポイント)
魚を見付けるのではなく、まずは海底環境に変化のある"ポイント"を見付けましょう。岬の先端などの潮流に変化のある場所や、大きな沈み根や沖磯の周囲は魚が多く集まるポイントです。さらには適度な空間を持った岩下、折り重なった岩陰、岩の亀裂などは根魚が最も好むスペースです。ある程度経験を積んで行くと、「ここの岩下には何か居そうだな…」と、自然に雰囲気として感じる事が出来るようになります。ただし、大きな岩があるからといって、虱潰しに岩陰を覗いて回るのも悪くはないですが、岩下や岩陰ばかりに目を取られてしまうと、自分の周りを泳いでいる魚に気付かないこともあると思いますし、費やす時間や労力を考えるとあまり効率の良い作業とはい� �ません。サザエやアワビを捕っている人が魚の存在に気付かないことや、僕達が魚ばかりを気にしてサザエやアワビに気付かないことと同じです。大事な事は、一つの事ばかりに気を取られず、常に色々な可能性を感じながら、広い視野を持って辺りを見渡すことです。
意外なことにハタ科を始めとした等の根魚も、岩下や岩穴での遭遇に比べると、むしろ"それらの周辺"での遭遇の割合のほうが遥かに多いです。キジハタやクエに限って言えば、僕の今までの経験上で最も多い遭遇シチュエーションは「イシダイ等を寄せている最中、ふと視線を横に向けると近くにポツンとこっちを向いてホバリングしていた」というもの。根魚=必ず岩陰にいるというイメージは間違っています。また、これは遠くの魚を寄せること ばかりに気を取られて、近くまで寄って来ていた魚に気付けないという典型的な例ですね。
回遊魚を探す場合は、捕食対象となる小魚の魚影・動きに着目します。常に泳ぎ回っている魚のため、なかなかこちらから探して回ることは難しいですが、海底環境とシチュエーション、時間的なタイミングに恵まれれば、海面を何気なく泳いでいる時に不意にチャンスは訪れたりします。
また、適当に潜って海底に留まり、しばらくボーッとしているだけで、魚がいつのまにか近くに来ていることもよくある話です。詳しくは下記の"魚を寄せる"の項を参照にして下さい。
魚を探す上で重要なのは、たとえ(捕獲対象にならないような魚種の)小魚でも良いので、魚影が濃いポイント・一角を探 しましょう。小魚の魚影が濃ければそれだけ魚が好む環境が整っているとも取れます。また、小魚も何も居ないような殺伐とした沈み根や岩周りに、大物が巣くっているとは考え難いですよね。
何人かで同じポイントに一斉に潜った場合、良い魚を見れた人とそうでない人に分かれることがあります。これは一見"運や偶然"という言葉のみで片付けられがちですが、それに加えて魚を探せる技量が備わっているかどうか、自然とそういうポイントに身体が向かっているかどうかで決まるとも言えます。"その日その時の運の差"という言葉だけで全てが片付くわけではありません。前の項でも触れましたが、そもそも"運が良い"という言葉自体、結果から後付けされる造語みたいなものですからね。
B� �魚を寄せる、待つ
基本的に、魚は追い掛け回して突くものではありません。人間は海中でどんなに頑張って泳いでも、魚より早くは泳げませんからね。岩陰に隠れて息を潜め、そこを通り掛かった魚を突いたり、こちらが何らかのモーションで魚の好奇心に訴えかけ、魚を意図的に寄せたりし、十分な間合いの中で魚と駆け引きする方がよっぽど効率的です。
一般的な寄せ方としては通称「ゴリ寄せ」と呼ばれる岩肌でゴリゴリと音を立てて寄せる方法があります。岩と岩を擦り合わせて大きな音を立てるイメージを持っている人も居ると思いますが、実際にはそれほど大きな音を立てる必要はありません。少し固めの手袋(掌がゴム地の物)を用いたならば、指1〜2本で岩をジョリジョリ と擦るだけで十分です。むしろ、僕達が発する何らかの音を聞きつけ、何もしなくても魚が寄ってくる場合も珍しくありません。
とにかく好奇心にさり気なく訴えかける程度で良いので、無駄に動くと警戒心まで煽ってしまいます。寄せの最中で注意するべきは、「魚を寄せながら、いかに自分を隠せるか」です。いくら時間を掛けて必死になって寄せていても、自分の身体が魚から丸見えでは完全には寄り付きません。岩陰からマスクとヤスだけが出ている状態、もしくは海藻の中に完全に身体を沈めている状態等が理想の形といえます。地形を味方につけながら、息の続く限り寄せ続けます。あと一歩が寄り切らない魚に対しては、ワンダッシュでの一突きや、一旦浮上して少しポイントをずらし、改めて寄せ直すと� �った手段もあります。(自分に有利なポイントに移動したり、また気分転換という意味も込めて)
その他の寄せ方としては、砂煙に興味を示す魚に対する海底で砂を巻き上げる寄せ方があります。これも砂煙の巻き上げ過ぎは禁物です。左手で海底をパタパタと軽く叩く程度で十分です。それで寄って来なければ、違う手段を考えるべきでしょう。
全身性エリテマトーデスとは何か
ハタ科の魚のように、ゴリ寄せや砂煙の寄せには全く反応しないくせに、何もしなくても地味に寄ってくるという魚種もいます。
… 寄せに反応する魚 …
イシダイ、イシガキダイ、クロダイ、ウマヅラハギ、スズキ、マダイ、メジナなど。
C)魚に寄る
魚の中には何をやっても絶対に寄って来ない魚もいます。そんな魚に対しては、こちらからアプローチ(近寄る)するしかありません。むしろ、全体的に見れば寄せに反応する魚の方が少ないと思いますので、魚に対する寄り方は非常に重要であり、神経質になるべきところです。
こちらから寄る際には、とにかく魚(周りの魚も含む)を刺激しないことがポイントです。警戒心を煽らないようにするためにはどうすれば良いか?それだけを考えます。
ベストはもちろん最後まで魚に気付かれないこと。地形や海草等を利用し、魚の前に自分の姿を曝さないこと。魚に気付かれなければどこまでも近付けます。海藻などが良い感じにブラ� �ンドになれば、ヤスが当たるまで人間の存在に気付かない魚も居ます。
□ もし気付かれてしまった場合は…
・静かに動く・フィン等で岩を擦らない。
⇒とにかく警戒心を煽らないように心掛ける。
・魚の視界から姿を消し、海草、岩陰などの障害物を利用して近寄る。
⇒自分と対象魚との周りにある全ての物(ブラインド)を利用する。
・時間を掛けない。
⇒例えその場で微動だにしなくても、時間を掛ければ掛けるほど魚は人間の存在を不快に感じ、警戒心は上がっていく。見付かってしまったからといって、その場で立ち止まるのはNG。ヤバイと思ったら一気に近寄る強引さも時には必要。
・視線を逸らす・気付いていない振りをする
⇒マダイなどの警戒心の強い個体は、見続けられると警戒心を感じる場合もある。
また、なかなか寄り切れない魚に対しては、自分の息止め時間と相談しながら、気付かれるのを覚悟で一旦上がって呼吸を整えて再潜行するべきか、ワンチャンスを逃さずに一息でがんばるか…。この辺の判断は経験やイメトレの成果を問われるところです。一旦上がって再潜行をする場合は、魚の真上から魚目掛けて一直線に潜っていくのではなく、ヤスを構えながらあえて少し離れた地点(根の逆サイド等、ベストは死角部分)に着底し、岩肌や海藻等のブラインドを利用しながら、万全の状態で臨むようにしましょう。※一旦浮上する際にも、出来れば魚から少し離れた死角になる場所で浮上したいですね。
Attack ‐ヤスの構え方‐
〜最後まで集中力を切らさない〜
魚突きをしていればそれなりに身に付く事ですが、まずは腕を伸ばして固定し、ヤスの長軸と対象物への目線(視線)を平行にし、それらをできるだけ身体の軸に近付けて構えます。右利きならば右頬を右肩に近付けるような感じです。視線はビリヤードをする時と同じ感覚で、ヤス先と目線との延長線上に目標物がくるようにします。真っ直ぐの視線に対してヤスの軸が身体から大きく離れたような構え方をすると、ミスショットになり易いです。
ヤスの構え難い岩下での穴撃ちや、オーバーハングになったポイントで上から宙吊りの状態で撃つ場合などは理想的な構えをすることが出来ませんが、そんな時で� ��ヤスの長軸の延長線上に目標物があることだけは確認して、ヤスを放つように心掛けましょう。
その他、岩等を蹴ってワンダッシュしてヤスを発射する場合や、魚を追い掛けながら強引に撃ち込んだりする際に、始めは腕を縮めておいて射程に入るギリギリのところで腕を伸ばしながらヤスを発射する"腕発射"なる技もありますが、魚との距離を多少縮め、ヤスの初速に気持ち程度の勢いが付く反面、非常に狙いがブレ易いため、"ダメ元"的なシチュエーション以外では普通に撃った方が確実です。
□ ワンダッシュ
これ自体は場合によっては非常に有効的なテクニックだと思います。
岩肌を踵で蹴って水中でジャンプをしたり、ヤスを握っていない方の手を利用して魚との距離を縮めることができます。"あと1歩"近付きたい場合、寄り切らない場合等に、微妙な警戒心を持つ魚に対して用いる技ですが、状況によっては周りの魚が一気に散ってしまう場合もあります。初動は静かにしましょう。
□ 狙い所
可能であれば頭部を狙いましょう。美味しく食べるために身に傷を付けないということも理由ですが、捕獲面においても頭部の骨は動き難い(崩れ難い)ため、一旦ヤスが刺さると抜け難く、また目の後ろに位置する脳を損傷させることが出来れば、一撃で魚を仕留めることが出来ます(通称:キルショット)。しかし、魚とはいえ大型魚にもなれば頭蓋骨はかなり硬く、遠めからヤスを放った場合や、入射角が悪かったりした場合は、ヤスが上手く刺さり切らずに弾かれてしまうこともあります。
そういった要素が考えられる場合には、無理して頭部は狙わず、確実にヒットさせられる部位にヤスを撃ち込みましょう。脳以外に、背骨の上を通る神経を上手く遮断できた場合にも、キルショットと� �様の効果を得ることが出来ます。(ただしこの場合、魚は死んでいません。)
□ 狙いが定め難い場合
泳ぎ回る魚に対してはヤス先で魚を追い回すのではなく、ヤスは固定し、その前方を通り掛かった魚にタイミングを合わせるようにしてヤスを打ち込みます。
□ 押さえ込む
ヤスを放って魚にヒットさせることができたら、すかさず今度は魚の力を押さえ込むために「押え」という動作に入ります。これは魚にヤスを打ち込んだ直後、出来るだけ素早くシャフトを掴み、そのままの流れ(体の勢い)で魚を海底や岩肌に押え付けます。そうして魚の力を押さえ込むと同時に、甘く刺さっていたヤス先をグッと深く押し込みましょう。しっかり押さえが出来たら片手で魚をキープし、ヤスが刺さったままの状態で海面へと浮上します。
□ 魚を取り込んだ後は…
海の中で確実に絞め、失血させ(血抜き)、必要以上に暴れさせないようにします。
暴れさせないことで旨味成分を身体に閉じ込め、体内の血液を可能な限り出させることで臭みや無駄な血合いを取り除くことが出来ます。たとえ打ち所が悪く、身を変に傷付けてしまったとしても、上手く血抜きをさせることが出来た魚は傷口がそれほど汚くなりません。海の中で魚を絞めることは少々面倒な行為になりますが、両鰓を付け根まで全て引き千切るだけでも食味としては違いが現れます。
しかし危険度の高いサメの出る海域で、ドクドクと豪快に出血させるのは・・・いかがなものでしょう。その辺は御自分の判断と価値観にお任せします。
岩下や、岩穴、岩の亀裂など、限られた(狭い)スペースの中に潜む魚を突く行為を穴撃ちと言います。こうしたスペースに居る魚は警戒心が薄らいでいることが多く、さらには逃げ場が無い(魚が泳ぎ回れない)などの理由から狙いも定め易くなるため、シチュエーション的にはかなり捕獲率の高い突き方になります。
ただし、複雑に岩が折り重なったポイントや、奥行きが複雑なポイントではヤスを構える事自体が困難な場合も少なくなく、またスペースからの出口が魚の大きさよりも狭い場合などもあるため、実際にヤスを撃つ(構える)際には注意が必要です。
狙い所としては(普通の撃ち方に比べると狙いが定まりやすいはずなので)出来る限り頚部〜� ��部を狙うように心掛けましょう。理由として、岩下でヤスを撃ち込んだ場合には取り込み作業をする上での十分なスペースが確保されておらず、手早く取り込みが出来ないことが多いため、身切れによるバラしを防ぐためにも極力硬い(ヤスが抜け難い)部位を狙うのがセオリーです。また、撃ち込んだ直後はチョッキ銛であれば手早く狭いスペースから引き抜き、2又ヤスやパラライザーであればそのままの流れ(ヤスの勢いに乗せて)後方や側面の岩肌に押さえ付け、より深くヤス先を魚体に突き刺すようにします。取り込みに関しては、可能であれば魚を素手で掴んだ状態で岩下から引き出すようにしましょう。右手でヤスをしっかりと固定し、魚を岩肌に押さえ付けたままの状態で、左手で魚の両鰓元を掴みにいければベストで� �。
□ 追い込み(追跡型)
中層または海底付近を泳いでいる魚にプレッシャーを掛け、適当な岩下に逃げ込ませて穴撃ちをする行為です。寄りそうで寄らないイシダイ等に対し、とても有効的な方法といえます。当たり前の話ですが、回遊魚を始め、スズキやマダイ等、岩下を住処としていない魚をいくら追い回しても、岩下に入り込むことはありません。
プレッシャーの掛け方としては、軽く追い掛ける程度で十分です。あまり近寄り過ぎたり、勢い良く追い掛けたりすると、過剰な反応を示して一目散に視界から消えてしまう場合があります。
□ 追い込み(尾行型)
そのエリアの海底環境や地形を熟知しておらず、尚且つ中層に自分の思い描く対象� ��が泳いでいない場合に、僕がよくするストーカー行為です。
単に"岩下・岩穴"と言っても、魚が好むスペースと、そうでないスペースがあります。その違いと理由は人間が視覚的に判別できるものもあれば、「何故こんな雰囲気の良い岩下に魚が居ないんだ?」と思わず目を疑ってしまうような、魚にしかその理由が解り得ないものまであります。その答えを魚から教えてもうことが出来れば…非常に楽に魚探しができますよね。
方法は簡単。魚を尾行するだけです。上記の(追跡型)との違いは、魚に対して一切プレッシャーを掛けないこと。視程ギリギリの間合いを取り、とにかく魚を自然に泳がせて、岩下に入り込むのを待ちます。そうしてその魚の入って行った岩下は、環境的にも魚にとって好 ましいスペースであると言えるはずです。小さなサンバソウを尾行し、そのサンバソウが入って行った岩下にクチグロやクエが居たという経験も一度や二度ではありません。また、自分が熟知しているはずの通い慣れたポイントでも、「こんな所にこんな岩下があったのか!!」なんて発見もあるでしょう。
案内役として適しているのは、コブダイ(60cm〜80cm程度)とイシダイ(30cm程度)ですが、これらは潜る海域や対象魚種によって、臨機応変に考えて下さい。透明度の良い時は水面から魚のシルエットを追うこともできるため、体力を温存しながら容易に大物の根城を探すことが出来るかもしれません。
Imagine ‐想像‐
〜暇があれば妄想しよう〜
海を離れてのイメージトレーニング(以下・イメトレ)は軽視されがちですが、実際はかなり重要です。過去の経験(失敗)やその時のシチュエーションを忘れずに脳裏に焼き付け、「次に同じシチュエーションで出会ったらどう攻めるか?」を考えます。
・もう少し寄せてみる?
・もう少し寄ってみる?
・寄せ方を変えてみる?
・寄り方を変えてみる?
・潜り方は適切だったか?
・利用できる障害物は無かったか?
・抑えがしっかりできなかったか?
・構え方が雑になっていたか?
・集中が切れていなかったか?
失敗から得るものは非常に多いです。しかし、常に向上心を持ち、失敗を失敗として受け入れ、反省(考え)することが出来なければそれは何のプラスにもなりません。同じ失敗をしないためにはどうすれば良いのか?を自然と考えられるように癖付けましょう。失敗を繰り返すのも決して悪い事ではありません。しかし、全く同じような失敗を何度も何度も繰り返すのは考えものですよね。「潜って魚を突く」というだけの非常にシンプルな趣味ですが、どれだけリアルに「イメージ」し考える事ができるかで、これからのスキルアップの角度に差が出ることは間違い無いと思います。
※魚が獲れた時よりも、獲れなかった時の方が確実に成長できるはずで� ��。
※突行予定日の前夜に布団の中でリアルにイメトレをし過ぎると、興奮して眠れなくなる恐れがありますので、ご注意下さい(笑)。
また、復習だけではなく、予習の意味でもイメトレは重要です。初めて出会った魚に対して何の情報も持たなければ…その時点ですでに分が悪いですよね。水族館で見た光景、魚図鑑で見た画像、魚屋で見た実物、そしてweb上にいくつかある魚突きサイト等を参考にし、自分でどんどんその魚のイメージを膨らませていってください。
・寄って来る魚なのか、寄らない魚なのか?
・警戒心はどの程度強いのか?
少しでも情報があれば、それだけ有利に魚と駆け引きができるはずです。僕も初めて太平洋で潜った� ��に痛感しましたが、魚の名前すら解らないようでは話になりません。
Equipment ‐装備‐
〜最低限の道具は揃えよう〜
@)ヤス・手銛
各種装備品の中でも、ヤスの性能はスキルで補えないことが多く、シャフト長・材質、先端形状等により漁獲を大きく左右します。
□ 銛先
先端形状(銛先)は、大きく分けると2つ。先端が固着しているヤス先(2又や3又、パラライザー、羽根式)と先端がシャフトから離れるチョッキ式の銛先です。
… 2又、3又、パラライザー …
釣具屋などで安価で購入でき、また自作もし易いのが売り。
しかし、上記の銛先を使用した場合は、魚を突いた直後にバラしを防ぐため"押さえ"と言われる行為が必要になります。暴れる魚を力と技術でコントロールし、海底や岩肌に押さえ付けるという対象魚によっては非常に高い難易度を求められる行為です。これを成功させるためにはチョッキ銛と比べて一歩以上近くからヤスを打ち込む必要がありますし、海中での息止めの時間も長くならざるを得ません。また、逃走中の魚を背後から撃つという行為(高確率で押さえ切れない)や、障害物が何も無い中層でのアタック(全力フィンダッシュをして水圧で押さえるという方法もあるが…)等、シチュエーションによっては獲れないケースも多� ��、大物を狙うには向いていません。
ただ、私個人の考えとしては、初心者のうちは是非ともこのヤス先(2〜3又)でスキルを磨いて頂きたいですね。いきなり長尺のチョッキ銛を使用すればたしかに大物は狙えるのですが、やはり物事には順序があります。このヤス先で魚突きを始め、魚との距離感や押さえの重要性を身に付けた上でチョッキ銛を使用すれば、魚突きの基礎からが身に付いていき、ヤスを変更しても後々にそれが役立っていくはずです。
また、「MOGULER'S DELIGHT」の栗岩さんや山形大学「AQUA‐LIFE」のように、熟練者にも関わらずあえてこの難易度の高いヤス先と短いシャフトを使用し、全国各地で魚突きを行っている方々も多くおられます。彼らの漁獲が示すように、大型のマダイや回遊魚、イシダイ、スジアラ、ハマフエなど、スキルを磨けば驚くような漁獲を得る事もできます。
… 羽根式(両羽根、片羽根)…
貫通力に優れ、魚に当たると羽根が開き、返しを効かせて魚をバラし難くするタイプの銛先です。チョッキと違いシャフトにヤス先が固着しているため、暴れる魚に対して傷口が広がり易いのが難点です。
… チョッキ式銛先 …
対大物用の銛先。魚に当たるとヤスの先端(チョッキ)が外れ、それが魚側に残ります。シャフトとチョッキはラインで連結されているため、魚の力を逃がしながら(釣りのような感覚で)やり取りが出来ます。もちろん突いた後の押さえも要らず、真正面・真後ろ以外ならどんなシチュエーションにも対応できる万能の銛先です。幾つかの魚突きサイトや水中銃等を取り扱う一部のwebショップで、銛先を始め自作用の連結金具や押し棒等を販売しているようですが、やはりコストが掛かるのが難点です。
自作で銛を製作するならば、代用できる物は代用してコストを抑えることも一つの手段でしょう。参考サイト⇒「flat out@pleasure」
□ シャフト長
長ければ長いほど射程は延びますが、長くなればそれだけ水の抵抗や、障害物からの干渉を受けるようになり、取り回しが難しくなります。またその反面、短ければ射程はもちろん短くなりますが、海草の生い茂ったポイントでの使用や、テトラや岩下などで穴撃ちをする場合は短い銛の方が断然有利になります。
短い手銛から長い手銛に持ち替えた直後は、必要以上に扱い難く感じるかもしれませんが、慣れればそれほど苦にならないことも多々あります。ヤスの全長において、3m程度までなら特に"長い"とは言えないでしょう。
これがベストの長さというのは存在しません。自分の使い易い手銛こそがベストな長さです。
□ シャフトの材質
竹、アルミ、ステンレス、カーボン、グラスファイバー等ありますが、強度(撓り)、重量、コスト、加工のし易さから、カーボンパイプがお勧めです。僕の仲間内でも(中古の)ゴルフシャフトで代用するケースがほとんどです。1本百円〜数百円で手に入りますからね。
単純に軽さを追求すれば初速が上がりますが、ある程度の重さが貫通力と伸びのある射程を生みます。
□ ゴム
釣具屋に売られているアメゴムを使うのが一般的です。少し高価ですが、スポーツ店に売られているエクササイズ用のチューブはとても伸縮性に優れています。また、それらはカラーにより強度が異なります。セラチューブを使用するならば、推奨カラーはブラックです。
A)フィン
ブレードの長さや材質、ポケットの形状など様々なフィンが出回っていますが、海面から目的深度までを安全に往復できれば、どんなフィンを選んでも良いと思います。深度を求めるならばロングフィンは必要アイテムとなりますが、浅場や藻場などの取り回しの悪い漁場ではロングフィンを履くべきではありません。
ウェイトの重さにもよりますが、ある程度の 水深(7m程度)を超えるとマイナス浮力が働くため、どんなフィンを履いても潜行に関してはさほど苦になりません。少し蹴ればグングン沈んで(落ちて)行くはずです。ですが、いざそのマイナス浮力の水深から海面へと向かおうとすると、推進力の乏しいフィンではこれが結構キツかったりもします。重い魚を腰にぶら下げていれば尚更です。もちろんワープフィンやミューフィンなど、一般的な形状のフィンでも水深20mでの魚突きは十分可能ですが、目安としては10〜15m以深を攻める場合はロングフィンを履いた方が潜行(特に浮上)に関しては楽であり、また安全であると思われます。もちろん、全てのフィンにおいて言えることですが、フットポケットは足のサイズに合ったものを使わなければ、脚力を効率良く水� ��伝える事ができません。特にロングフィンに関しては、このフットポケットのサイズや形状、硬さ、そしてブレードの硬さや材質など、自分の足の形状と脚力に合ったものであるかどうかの見極めが重要になってきます。
参考サイト→「MOGULER'S DELIGHT」 「PURE=COMPANY」
B)マスク・シュノーケル
これに関してはほぼビジュアル重視でよいのではないでしょうか。あえて言うなれば…
□ マスク
最低限、顔のサイズにフィットする物を使いましょう。浸水するようであれば話になりません。また、マスク容量の少ないものはマスクブローで無駄な空気を使わなくてすむため、素潜りでの潜水には向いています。シリコンが黒い方が岩下等の暗い場所を覗いた時に見え易いとか、ガラス部分がミラーになっている方が魚から目の動きが見え難いと言われていますが、どれほど実証されているのかは解りません。好みの問題でしょう。
□ シュノーケル
マウスピースとパイプの連結部(口元付近の湾曲した部分)がプラスチック素材で固定されている物と、そうでないジャバラ状になったものがある。素潜りにおいては、潜行及び浮上時による水圧で口元が疲れるため、固定されている前者の方が絶対に向いています。パイプの先端部に海水の浸入を防ぐような構造のものもありますが、使用している人のなかには呼吸がし辛くて使い難いという人もいます。
W)ウェットスーツ
夏でも意外と海の中は寒く、潜れば潜るほど水温の冷たさにストレスを感じるようになります。寒さで身体が震えだすと息止めも満足に出来なくなり、魚突きどころではなくなるため、季節に応じたウェットスーツを着て潜るのがベストです。また、波打ち際で波に巻かれた時や、クラゲやシダ等の生物から身体を守ってくれます。
また、ウェットスーツを着ているだけで波酔いしたように気分の悪くなる人が居ますが、頚部の締め付けからくることが多いようです。
Danger ‐危険‐
〜魚突きは危険な趣味であることを忘れずに〜
これまでの項でも少しずつ触れてきましたが、魚突き(素潜り)は危険な趣味・スポーツであることを自覚してください。一度海に入れば、様々な要素が危険因子に上がってきます。海流、高波、サメ、船、水中拘束等、いつ何が起こるか解らず、またそれらはいつ身の回りに起こっても不思議ではありません。
また体調面では過度の息止めによる酸欠(ブラックアウト)や、ハードな突行による足の痙攀、時には無理な潜行により鼓膜が破れたりすることもあるかもしれません。安全に気を付けて海と接していたとしても、仮に脳卒中や心不全などが起こった場合は、陸では助かる程度のものでも、海の中で� �命取りです。陸で待っている人や、一緒に潜っている人が異変に気付く確立なんて微々たるものです。
体調面で不安のある時、海が荒れている時などは、絶対に海に入らないようにしましょう。
Enjoy ‐最後に‐
〜楽しんでるヤツは、絶対に上手くなる!〜
長々と綴りましたが、誰が何と言おうと上達するためには現場での実践が一番です。自分にとっては、自分の経験こそが全てです。頭で理解しても、身体が動かなければ魚は獲れません。しかし、頭で上手く理解出来ていなくても、向上心を持って海に通い続ければ、無意識のうちにでも身体が覚えて反応できるようになります。
人それぞれ目的や価値観の違いはあると思いますが、安全第一で結果を焦らず、いつまでも楽しい海を満喫して下さい。
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